中編

洒落怖~名作集~

着物の少女

毎年夏、俺は両親に連れられて祖母の家に遊びに行っていた。 俺の祖母の家のある町は、今でこそ都心に通う人のベッドタウンとしてそれなりに発展しているが、二十年ほど前は、隣の家との間隔が数十メートルあるのがざらで、田んぼと畑と雑木林ばかりが広が...
海の怪

腐乱死体

あまり怖くないかも知れないが、拭い去りたい記憶なので、暇潰しのお付き合いを。 ずっと昔のことなんだけど、一人である海辺の町に旅行したことがある。 時期的に海水浴の季節も過ぎていて、民宿には俺以外客はおらず、静かな晩だった。 俺は缶...
師匠シリーズ

【師匠シリーズ】エレベーター

大学1回生の秋だった。 午後の気だるい講義が終わって、ざわつく音のなかノートを鞄に収めていると、同級生である友人が声を掛けてきた。 「なあ、お前って、なんか怪談とか得意だったよな」 いきなりだったので驚いたが、条件反射的に...
師匠シリーズ

【師匠シリーズ】貯水池

大学1回生の秋だった。 その頃の僕は以前から自分にあった霊感が、じわじわと染み出すようにその領域を広げていく感覚を半ば畏れ、また半ばでは身の震えるような妖しい快感を覚えていた。 霊感はより強いそれに触れることで、まるで共鳴しあう...
師匠シリーズ

【師匠シリーズ】自動ドア

先日、ある店に入ろうとしたときに自動ドアが開かないということがあった。 さっき出たばかりのドアなのに、戻ろうとすると反応がない。 苦笑して別のドアから回り込んで入った。 こういうときはえてして別の目撃者がいない。 ある種、個人的...
師匠シリーズ

【師匠シリーズ】鋏(ハサミ)

大学3回生の頃。 俺はダメ学生街道をひたすら突き進んでいた。 2回生からすでに大学の講義に出なくなりつつあったのだが、3年目に入り、まったく大学に足を踏み入れなくなった。 なにせその春、同じバイトをしていた角南さんという同級生にバ...
師匠シリーズ

【師匠シリーズ】ともだち

大学2回の冬。 昼下がりに自転車をこいで幼稚園の前を通りがかった時、見覚えのある後ろ姿が目に入った。 白のペンキで塗られた背の低い壁のそばに立って、向こう側をじっと見ている。 住んでいるアパートの近くだったので、まさかとは思ったが...
師匠シリーズ

【師匠シリーズ】雨上がり

昨日から降っていた雨が朝がたに止み、道沿いにはキラキラと輝く水溜りがいくつもできていた。 大学2回生の春。 梅雨にはまだ少し早い。 大気の層を透過して、やわらかく降り注ぐ光。 軽い足どりで歩道を行く。 陽だまりの中にたたずむよ...
洒落怖・怪談

闇の音楽を作る一族

小学生の時、少しメルヘンな音楽の先生がいた。 でも言葉に重みがあるような先生だった。 山田詠美の『僕は勉強ができない』って本がある。 その中で小学校の校長先生と主人公が、生きていることについて語り合うんだが、 主人公が校長に噛み...
洒落怖・怪談

牛の墓

私が通っていた高校は、数年前に改築され、今では近代的な姿に変貌を遂げている。 在学中は、どこもかしこも古めかしい学校だった。 歴史だけは県下有数というこの学校に昔からひっそりと語り継がれているという怪談話があった。 それは通称...
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