渦人形(ひょうせ)

洒落怖~名作集~

高校の頃の話。

高校2年の夏休み、俺は部活の合宿で某県の山奥にある合宿所に行く事になった。
現地はかなり良い場所で、周囲には500m~700mほど離れた場所に観光地のホテルやコンビニなどがあるだけで他には何も無いけれど、なんか俺達は凄くワクワクしてはしゃいでいたのを覚えている。

その日の夜の事。
暇をもてあました俺達は、顧問の先生の許可を貰いコンビニまで買出しに行く事にした。
わいわい騒ぎながら10人ほどで外にでて歩き始めると、昼間はそちらのほうに行かなかったので気付かなかったが、合宿所の裏手に家らしき建物があるのが解った。

その建物には明かりがついていなかった。
多分空き家か民家っぽいけど別荘か何かなんだろうと思われた。
友人が調子の乗って「あとで探検いかね?」と言い出したが、あまり遅くなると顧問の先生にドヤされるし、ひとまず買い出し終わってから合宿所内で今後のことは考えようという話になった。

コンビニで買出しをし合宿所に戻る途中、後輩の1人が変なことを言い出した。
例の建物の玄関が少し開いていて、そこから子供がこちらを覗き込んでいたという。
俺達は「そんなベタな手にひっかからねーよ!」と後輩をおちょくったが、後輩が真顔で「マジで見たんだって!」というので、ちょっと気味が悪くなってしまい家が見えるところまで確認に戻ったが、ドアは閉じていて人の気配も無く特に異常は無かった。
俺達は後輩をおちょくりながら合宿所へと戻った。

合宿所へ戻り、2階の廊下から外を眺めると、例の家の1階部分が木の間から
僅かに見えた。
俺が友人と「あそこに見えるのそうだよな?」なんて話をしていると、家のドアが僅かに開き、暗くて良く解らないが子供らしい人影が頭だけをドアから出してこちらを覗きこんでいる。

「…え?」

俺と友人は同時のその光景を目撃し沈黙した。
その後最初に口を開いたのは友人だった。

「おい…あれって…」

友人はかなり動揺しながらそういった。
俺も恐怖というよりあまりにも唐突の事で思考が停止してしまっていて。

「子供…こっち見てるよな?」

としか返せない。

その時、後ろの部屋から笑い声が聞こえてきた。
俺と友人はその声にびっくりし、ハッ!と我に返った。

そして、俺は「これやばくね?ばっちり見えてるよな?」というと、友人が「おれちょっと携帯持ってきて写真撮る」と自分の部屋へと走っていった。
すると、騒ぎを聞きつけてなんだなんだと合宿所にいる生徒(他校の生徒もいたので総勢60人くらいが合宿所にいたのだが、そのうちの半分くらい、30人ほど)が2階の廊下に集まりだした。

子供らしき人影はまだドアから顔のみを覗かせてこちらを見上げているように見える。
廊下は大騒ぎになり、とうとう顧問の先生たちも何の騒ぎだとやってきた。
第一発見者の俺と友人が事情を話していると、窓から外を見ている生徒の何人かが「あ!」と声をあげ、かろうじて聞き取れる音で

パタン…

とドアの閉じる音がした。
顧問の先生たちが外を見る頃にはドアは閉じられ人影もなくなっており、何事も無い林と明かりもついていない家らしき建物が見えるだけだった。

当然先生たちは信じてくれなかったが、ノリの良い若い先生2人が一応確認しに行ってくれることになり合宿所の裏手へと回った。
俺達が窓から様子を見ていると、懐中電灯を持った2人が現れ、家の玄関のところで何かやっている。
どうやらドアが開くか調べているようだがあかないようだった。
その後「誰かいますか~?」と声をかけたりしていたのだが、反応がないらしく5分ほどで戻ってきた。

その後何人かが携帯で撮影した画像も証拠として出したのだが、所詮は携帯の画質、真っ暗な画像が映っているだけで何の証拠にもならない。
俺達は先生達に「さっさと寝ろ」とまくし立てられて自分達に割り当てられた部屋へと戻った。

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